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山陽新聞連載Vol.2 その「好き」の正体は何?

山陽新聞で連載を担当しているコラム「一日一題」、今回は第2回目の記事をご紹介します。最後にブログ限定で、掲載しきれなかった小話を書いていますので、合わせてご覧ください。

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その「好き」の正体は何?

大学で数学を学び始めたとき、少し戸惑いを感じました。高校まで数学は得意で、好きでした。特に、問題を解いて答えにたどり着く、その過程や達成感にひかれていました。

ところが、大学で扱うのは、これまでとは違う数学でした。「1+1はなぜ2なのか?」など、定義や証明を深く掘り下げていく抽象的な世界に、どうしても入り込めませんでした。先生の講義を聞いても、話の内容がさっぱり分からない。そして不思議なことに、そのことに対して焦りも生まれませんでした。興味を持てないので、エンジンがかからない。そんな感覚でした。

そこで、あることに気づきました。私が好きなのは「数学そのもの」ではなく、「数学の問題を解くこと」だったのだと。問題を解いて、答えにたどり着く。そのプロセスや達成感が好きだったのです。例えるなら、「車を運転するのは好き」だけど、「車のメカニズムには興味がない」という感じです。同じ「数学」でも、「研究すること」と「問題を解くこと」は、まったく違うものでした。

この経験から、大事なことに気づきました。私たちは、「好き」という言葉で、思考を止めてしまいがちです。例えば「サッカーが好き」「音楽が好き」という言葉の中には、多様な要素が含まれています。私自身ピアノを弾くことが好きですが、一人で一曲を弾き切ったときの達成感もあれば、アンサンブルの中で自分のパートを担い、全体のハーモニーが重なっていく感覚にも、また別の楽しさがあります。

同じ「好き」でも、その中身は人によって違います。だからこそ、「好き」をもう一段分解して考えてみることが大切なのだと思います。「好き」の因数分解です。そうすることで、自分が本当に大切にしているものや、力を発揮しやすい場面が見えてきます。

あなたの「好き」は、どんな要素で構成されていますか。少し分解して考えてみると、新しい発見があるかもしれません。

2026.4.9

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メイキングエピソード:
大学に入って、授業開始3日目にして「ヤバいところに来てしまった…」と感じました。55名の同期のうち、数学という学問そのものに興味をもっている人が半分、私と同じような人が半分ぐらいでした。うち2名は、4月末には経済学部へ転部し、数学を使って課題を解決する世界に進んでいきました。そんな選択肢もあったなんて…当時はツユも知らず。
今、あの頃に戻ってもう一度進路選択をするなら、数学科は選ばないと思います(笑)

実はこの話を書いているときに、思い出したコラムがあります。
以前、朝日新聞の「天声人語」で読んだ、俳優のムロツヨシさんのエピソードです。ムロさんは東京理科大の数学科に入学、数学が得意だと思って進んだのに授業についていけず、不安を感じる中で、芝居に出会い、「自分はこっちに行きたい」と思って大学を辞めた、という話でした。ムロさんは同い年でもあり…勝手に仲間意識を持っています^^

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